五島のクリスマス -五島と生きる人々-
五島の椿のよっしーです。ぐぐっと寒さが身に染みるようになりましたね。
五島列島ではこれを書いている日(12月17日)に、強い寒気の影響で海が大荒れ。
船が相次いで欠航となってしまいました。
発送担当のみんなが朝から大慌てでしたが、自然に抗うことは出来ず…。
一方で風力発電の風車はぐんぐんとめいっぱい回り、空から舞ってきた初雪に子供たちが歓声をあげていました。
この島にいると「自然」を日々感じます。
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さて、12月25日はクリスマスですね。
五島の街もかわいい装飾が見え、「都会ではもっと煌びやかな装飾になっているんだろうなぁ」と思いつつ。
一方椿も咲き始めたので、島の森や山にちらほらと赤い色がちりばめられ、にぎやかになってきました。
五島列島で生まれ育った私にとっても、クリスマスはちょっと特別な日。
島の教会が、信徒のみなさんの手でイルミネーションの飾りつけをされるんです。
この手作りのイルミネーションや飾りつけされた教会が、私は大好きなんです。
今日は会社から車で20分ほどの奥浦地区にやってきました。
(こちらは堂崎教会。レンガ造りで、中は資料館のようにもなっています)
ご存じの方も多いかと思いますが、2018年<長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産>として五島列島を含む、長崎県内の教会群および地域が世界遺産に認定されました。
1700年後期、五島列島に人口減少の問題が生じ、大村藩(今の長崎県大村市)から移り住んできたのが、潜伏キリシタンでした。
(堂崎教会の目の前の海。曇り空の隙間から太陽の光がさすと、なんともいえない光景が目の前に広がります)
以降、江戸幕府・明治政府による厳しい弾圧や迫害があり、その歴史はいまだに五島の各地に生々しく残っています。
なので長い歴史の最中でも、こうして表立って信徒の方がお祝いできるようになったのはここ数十年ほどのことなんです。
クリスマスは、年に一度やってくるイエス・キリストの生誕祭。
仏教でも神道でも、お祝い事や奉納祭は地域をあげて盛大にお祭りをするように、
教会のある地域は、みんなでお祝いする大切な日です。
(こちらは地域のみなさんによってイルミネーションに彩られた浦頭教会。
厳しい弾圧のあった地区で、かつては責め苦にあう信徒の悲痛な声が2km先まで響き渡ったそうです)
しんと静まる五島列島の夜空の下、昔ならば夢のことのように煌めく教会とその光は、言葉にできないほどあたたかく、うつくしく見えます。
厳しい弾圧や迫害を経て、ようやく手にすることができたこの光は、
信徒のみなさんが大切に守ってきたものであり、
かつての先人から送られた宝物のように感じたのでした。
さて、そんな教会のまわりでは、ごくごく自然に椿を見ることが出来ます。
例えば教会のステンドグラス。
(堂崎教会。日本の教会のステンドグラスは絵画のようなデザインではなく、和柄のようなデザインが多いそう)
各教会ごとにデザインも変わるので、ぜひ訪れてみてくださいね。
もちろん教会の周りにも、高確率で椿が植栽されています。
近くが山になっていると自然のままの猛々しい枝ぶりから、小さな椿が咲く様子もいることができます。
冬の五島に訪れる際はぜひ教会に足をお運びください。
また、厳しい弾圧の最中、五島列島にいた潜伏キリシタンが十字架の代わりに大切に持っていたのが「4つに割れた椿の果皮」です。
1000万本も椿が自生する五島列島ですから、いざ取り締まりがあっても周囲の藪に投げ入れてしまえば、見つけ出されることはなかったのかもしれません。
五島列島の椿は、豊かな恵みをもたらしてくれたものであり、潜伏キリシタンにとってはひっそりと信仰することができるよすがとして、寄り添ってくれる存在でもありました。
クリスマスは、イエス・キリストの生誕祭であり、
日本中がお祭り気分で楽しめるイベントであり、
五島では守り継がれた信仰の気配が冬の夜空の下で煌めく日です。
年末に向けてぐっと寒さが厳しくなってきました。どうぞあたたかくしてお過ごしください。
メリークリスマス!
(よっしー)